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「本当にここ歩くの久々だな」

聡は街を歩きながら懐かしい気分に駆られていた。

「そういえば俺、数か月前までは大学4年生だったんだよな。すぐにでも自分の
身体に戻ろうと思ったんだけど、女子中学生の霞ちゃんの可愛さに惹かれて憑依
してそのまま成り済まして生活したまんまだったんだよな……」

聡は歩きながら思い出に耽っていると、生前まで住んでいたアパートに着いた。
そして中に入り郵便受けを調べてみると自分の部屋のところが未だに『永田』の
ままであり空き家であることが分かった。

「まぁ、人が亡くなったんだ。誰も住みたいとは思わないだろうな……ん?これは…」

聡は郵便受けの中に入っている分厚い封筒を手に取った。
差出人は『トイフェル製薬株式会社』・・・・。

それは聡が就職活動の時に訪れ、最終面接で『幽体離脱の薬』をくれた大手企業から
のものだった。

封を開けるとそこには内定通知書があり、どうやら内定していたようだ。
その他には、あのときにもらった『幽体離脱の薬』の詳細が書かれた紙が添付されていた。
聡の飲んだこの幽体離脱の薬は『アインゲヌーゼS40496』という名前であり、幽体離脱する
とともに自身の持っている我欲を限界を超えて高めてくれることがわかった。

「なるほど、通りで今までマンネリを覚えることがなく、あきなかったわけだ・・・・」

聡の場合は、『あの子になりたい・・・』という我欲を持っている。
可愛い女子中高生にでもなって得をするような楽しくて幸せな人生を送りたい。どんなに頑張っても
報われない嫌な現実から逃れたかったのだ。

聡の人生は散々なものだった。
父親は『有限会社 永田クリーンワークスジャパン』という零細企業の社長であり、酒・煙草好きで
女癖は悪くすぐに女に手を出していた。また幼い聡は虐待をたくさん受けていた。
職場ではセクハラやパワハラが日常茶番時だった。
また小中学とも学校で苛められ友達もできず、ずっと孤独だった。

聡が中学3年生になったときのことだった。
そんな父親の日頃の行いが災いし、嫌気をさした従業員の手によって夜中、家兼事務所に火を付け
建物を全焼させてしまった。

それにより火に巻き込まれた父親は死亡。聡は奇跡的に助かったのだがもうすでに自分の居場所がな
く父方の遠い親戚の家に引き取られることとなった。
高校に入学したころ・・・・
聡には母親はおらず、不倫相手との間でできてしまったということが親戚を通じてようやく知ってし
まった。

そして高校を卒業するとともに就職をしようと思ったのだが、ちょうど不景気で求人がなく高卒では
厳しいらしく親戚の家を出て一人部屋をなんとか借りることができて毎日のようにアルバイト
(引越し・事務所移転・資材搬入搬出・会場の設営撤去など)をして生計を立て大学に通っていた。

そして大学4年生の就職活動時に電車で楽しそうに話している女子中高生の姿を何度も見かけた。
そこに輝いている何かが見えてしまい、羨ましいと思い他人が幸せそうな雰囲気に嫉妬し始めた。
自分の人生にはない何かが彼女らにはある。聡は奪ってでも手に入れたいと思った。
人並の幸せを・・・・

それをこの幽体離脱の薬『アインゲヌーゼS40496』は助けてくれたのだ。聡にとってはこれが神から
の贈り物のように感じた。
これのおかげで聡は女子中学生の木下 霞に憑依でき彼女として幸せな生活を送ることができるように
なった。

この少女の肉体こそが今まで居場所がなかった聡にとっての素晴らしい居場所となったのだ。
聡の傷ついた魂をこの身体は受け入れ何度でも癒し慰めてくれる・・・・。

聡はここが本当の自分の居場所なんだと確信し、全くの他人である少女の身体を純愛し、ずっとこの
場所にいたいと思い、これから先も『木下 霞』として生き続けることを願った・・・・。

『この子になれて本当によかった・・・』

聡は心の中で想いを呟き、この少女の身体に敬意を表しずっと大切にしたいと改めてそう思った。



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